今回は建物の基礎について,素人さんでも解る様に簡単に御説明致しましょう。
建物の「 基礎 」には大きく分けて2種類あります。
一つは「 杭基礎 」で,もう一つは「 直接基礎 」です。
まず「 杭基礎 」の御説明を致しましょう。
「 杭基礎 」とは主に地表面から下が軟弱な地盤に建物や構造物を建設する場合において,深い所に有る良好な硬い地盤まで「 杭 」を打ち込んで構造物を支える基礎の事です。
それに対して「 直接基礎 」は構造物の荷重を直接,地表面近くの良好な硬い地盤で支える形式の基礎です。
「 直接基礎 」には「 べた基礎 」と「 フーチング基礎 」が有りますが,これらの説明を致しますと文章が長くなりそうなので今回は省かせて戴きます。
湾岸地域の埋立地に建っている中高層建物や超高層建物はほぼ100%「 杭基礎 」で支えられています。埋め立て地は元は海でしたので,地表から深さ10m程度が土でその下は瓦礫やゴミ等です。
ですので,埋立地の下の良好な硬い地盤はかなり深い所に有ります。だいたい地表面より約50m以上深い所に良好な硬い地盤があり,その地盤に「 杭 」を1m以上差込まなければなりません。その結果,中高層建物や超高層建物を建てる場合の「 杭 」の長さはかなり長いものになり,その分工事費が高くなります。
「 杭 」は長ければ長い程,大きな地震で折れ易いのです。
理由は横揺れの大きな地震がきた時,地震の水平応力が「 杭 」に強く働きます。地盤に垂直に差し込まれた「 杭 」に大きな横方向の力が加わりますと折れる危険性が大きいのです。
例えば,長さ50mの「 杭 」は約17階建てのマンションの柱の長さとほぼ同じです。
建物の柱は柱と柱を各階ごとに大梁で結んで水平応力に対抗していますが,「 杭 」は地面に垂直に穴を開け差し込んでいるだけですので柱の様に梁等で結ばれていません。「 杭 」の耐力( 太さ )だけで地震時の水平応力に対抗しているのです。
割り箸で実験すれば直ぐにわかります。割り箸の長さの中央付近に直角に力を与えますと,短い割り箸は折れにくいですが,長い割り箸は折れ易いのです。
この様な理由で私はマンションは地表面近くに良好な硬い地盤が有り「 直接基礎 」で建て,「 杭 」は無い方が良いと思っています。
ちなみに,ある著名な構造専門家が「 杭の長さは20mまでなら左程心配は無いが,それ以上の長さだと大きな地震がきたら,ちょっと心配だね。」と言われた事が未だに耳に残っています。
マンションを購入する時は「 基礎 」の種類や「 杭 」の長さをチェックした方が良いのではないかと思います。