想像や憶測で安易に値段を語るのは簡単ですが、データに基づく客観的な判断が必要かと思います。
基本、マンションの価格設定は、建築コストの積み上げと販売に要するコストに利益を乗せ、収益を最大化することが企業側のスタンスです。
その価格付けには様々なデータやリサーチが用いられます。
単純に問い合わせ件数が販売戸数の何倍か、類似物件の販売動向、物件から一定範囲内の世帯収入の分布はもちろん、それ以外にも大規模物件になればなるほど様々なリサーチが行われます。
問題は、その多くのデータに於いて昨年の夏以降深刻な状況を示し始めていることです。
当然企業側は不都合な真実をあえて明らかにはしませんが、優良在庫ならまだしも不良在庫を抱えることは即利益率の低下につながり、上場企業であれば決算報告書からその経営状況を確認することができます。
多くのデベロッパーの3月決算にその影響は少なからずあらわれることが想定され、合わせて発表される来期の見通しは経営者にとっては最重要意思決定項目となり、今は勢いで強気見通しを出せるほどの余裕はないものと思われます。
ご興味がある方は、野村不動産ホールディングスの決算資料をご覧になるといいでしょう。
一例として、野村不動産の昨年10月の第2四半期の決算では、業績修正により住宅事業を大きく下方修正しており、さらに第3四半期の数字を見ると通期の計画達成はかなり厳しい状況であることが分かります。
加えて、粗利益率は8%以上も低下していることも明記されています。
これがここ最近見られる販売延期の大きな要因の一つであり、大きな軌道修正が迫られていると見るのが現実的かと思います。
価格が上がるのではという単純な売り渋りとは大きく状況が異なると見ています。
結論として、市場全体の販売戸数自体が減少する中、売上げの最大化を狙ってコスト増と利益率低下のリスクを冒す余裕はなく、短期間で確実に売り上げをあげ、しかもコストをかけないことが求められるということです。
それにはどうすればいいか?
少なくとも無理な値付けは命取りであることは明白です。
なお、これは多かれ少なかれどの不動産会社にも同じ状況で、住宅分譲販売以外の事業(賃貸、管理、仲介、リフォーム、商業施設、オフィスビルなど)の収益強化が急がれるところですが、この多角化が軌道に乗っている会社とそうでない会社では自ずと体力に差が生じ、販売戦略の違いとなって現れます。
既に一部のマンションではこれまでとは一転した弱気(というか現実的な)価格設定が見られ、さらに販売が苦戦している物件では価格を下げるなどの動きが始まっており、これまでの強気相場からの揺り戻しが起こりつつあるように見えます。
以上、私の先日の想定価格の論拠の一部をご紹介させていただきました。
あくまでも個人的な見解であり内容を保証するものではありませんので、ご参考まで。