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品川大変身、買い物も観光も、羽田の国際線客にも的、新駅開発、効果1兆円超、ビル8棟に住居や店。
インバウンドの急増、2020年開催の東京五輪、27年のリニア開通......。交通の要衝でありながら、地味な街「品川」が生まれ変わろうとしている。東京都や東日本旅客鉄道(JR東日本)が進める再開発とともに小売りや外食、マンションなどが周辺に広がる見通しで、経済効果は1兆円を超えるという。品川〜羽田空港一帯の日本の「新・玄関口」の設計図を探る。
京浜急行電鉄品川駅前の商業施設「京急ショッピングプラザ ウィング高輪」(東京・港)は最近、平日でも買い物客の利用が増えた。
同施設を運営する京急ショッピングセンター(東京・港)は昨年秋、開業来14年ぶりとなる大規模改装を進め、全40店舗の大半を入れ替えた。三陽商会の英ブランド「マッキントッシュフィロソフィー」や婦人服専門店「ノーリーズ」などこれまで手薄だった人気ブランドが顔をそろえた。
同区に住む男性会社員(32)は「品川駅周辺の商業施設はウィングぐらい。これまでは新宿などに出かけていたが、改装で紳士向けブランドも入り、日常利用が増えた」と話す。「品川駅周辺の潜在需要は大きい。そこで普段使いができる衣料品や雑貨店を意識して誘致した」。京急ショッピングセンターの籔下拓也営業部次長はこう話す。
ウィングの改装は今後始まる巨大開発のほんの前触れにすぎない。JR東日本が進める山手線の品川駅―田町駅間の新駅計画は「東京都心部に残された最後の大開発」(東京都・都市づくり政策部)とされ、開発対象となる地域は少なくとも13ヘクタールに上る見通しだ。
敷地内には高層マンションや商業施設、オフィス機能を備えた複合ビルが計8棟建設され、都内では六本木ヒルズ(東京・港、11・6ヘクタール)や東京ミッドタウン(同・同、10・2ヘクタール)をしのぐ規模だ。都開発計画推進担当課長の鈴木理氏は「品川駅周辺は商業施設が少なく、宿泊施設も十分ではない」と狙いを話す。
「ビジネスに加え、観光や国際会議などの拠点となる都市を目指す」。9月末に東京都が策定した品川・田町駅周辺の再開発に関するガイドラインには、現在の品川駅西側に住居系や商業系といったように区分けがされ、それぞれの地域の未来図を描いている。
リニアが発着し、インバウンドが増える羽田と直結する品川はまさに日本の新・玄関口。明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科の市川宏雄教授の試算では、品川新駅の設置に伴う経済波及効果は六本木ヒルズ(約6千4百億円)の約2倍にあたる約1兆2千〜3千億円に達する見通しだ。「国際空港から電車で約20分の都市は世界でもほとんどない」(市川教授)。周辺の再開発を含めると経済効果はさらに膨れあがる。
事実、将来を見据えた動きがすでに本格化している。横浜八景島(横浜市)は約20億円を投じて、運営する水族館「エプソン品川アクアスタジアム」(東京・港)を全面改装する。来年1月に着工し、来夏に開業する予定で、魚を展示する水槽やアトラクションに照明や映像を投映して昼と夜で演出を変えられるようにする。全面改装で年間の入場者数を13年度比で約2割増やす考えだ。
飲食店運営のクリエイト・レストランツは8月、駅ビル「アトレ品川」内に米国のダイニングバーをイメージした新業態「エーダブリュ ゴーゴー」を開業した。同社では「出店地として魅力が増している」と見る。
周辺ではマンション開発も相次ぐ。野村不動産などが京急蒲田西口に分譲マンション「プラウドシティ蒲田」を来年12月に竣工させるほか、糀谷駅前(東京・大田)に16年12月に戸田建設などが新しいマンションを開業する予定だ。
開発ラッシュが予想される中、地価も上昇傾向。14年の東京都港区の基準地価(7月1日時点)では商業地で前年比4・9%増と中央区と千代田区に次ぐ伸びとなるなど、1980年代の土地バブルの発祥となった品川の地が第2のバブルに沸き始めている。
周辺の商店や住民の期待も高まっている。北品川本通り商店会で役員を務める篠原一哲さん(47)は「品川駅周辺には飲食店が少ない。羽田空港の国際線の発着枠が広がり、商店街のゲストハウスを訪れる外国人も増える」とみて昨年12月、それまで運営していた個人スーパーをそば屋に転換。「宿場町として栄えた品川が再開発で再び盛り上がれば」と期待する。
品川駅港南口近くの居酒屋店で働く男性従業員(23)は「港南口はリニア新幹線の駅が近くにできる予定で出張客を中心に店の来店客も増えるはず」と期待する。同じく周辺のラーメン店で働く男性従業員(32)は「五輪に向けて外国人向けに新しいメニューも考案したい」と意気込む。
品川再開発は周辺の駅にも脅威だ。上野駅、東京駅など従来の玄関口にとって個人消費も奪われかねない。住民、買い物客、ビジネスマンなどを奪い合う地域間競争の激化にもつながりそうだ。(篠原英樹)
▼品川再開発 東日本旅客鉄道(JR東日本)による品川―田町間の新駅設置に伴う再開発。新駅開発地の周辺13ヘクタールを対象に、JR東日本がマンションやオフィス・商業施設の入る高層ビル8棟を建設する計画。JR東日本や東京都などは品川駅周辺の再開発事業に5千億円以上を投じる見通しだ。
東京都が9月に発表したガイドラインには新駅一帯に海外企業の進出などをにらみ、多言語に対応した保育所や医療機関、インターナショナルスクールを誘致。外国人が利用できるサービスアパートメントなどの整備も進める方針だ。
東海旅客鉄道は名古屋〜品川を結ぶリニア中央新幹線の駅を品川駅に設置。近隣の竹芝地区では東急不動産と鹿島が、コンテンツ産業の研究や人材育成などの拠点として整備していく計画を打ち出している。