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湾岸地区にはタワーマンションが軒を連ね、東京の夜景を彩っている。なかでも高い人気を誇るのが「豊洲」だ。そこに住む人たちは一見「勝ち組」に見えるが、実際には苦しい現実を胸の内に抱える住民も多いという。その背景には「中学受験」と「中国系の子どもたち」の存在が……。豊洲の「教育問題」の実態について、住民に話を聞いた。
「勝ち組の街」に住む家族を悩ませる問題とは?
東京の夜景を彩るようにタワーマンションが軒を連ねる湾岸地区。そのなかでも1、2を争う人気を誇る地区が豊洲だ。大型ショッピングモールやホームセンター、ファミレスも備え利便性も抜群。3LDKのファミリータイプの物件が1億円を超えることも珍しくない。
そんな「勝ち組の街」に住居を構えた家族を悩ませるのが子供の教育問題だ。中学受験ブームが過熱し、中国人家庭の席巻といった現象も起きるなか、近年は豊洲から離れる人もいるという――。
「子供が塾に行きたくないと言い始めて、家庭内がギクシャクしています。1年後には受験本番なのに……」
豊洲のタワマンに住む40代の女性はこう悩みを明かすと、ため息をつく。フリーランスで働く彼女は公認会計士の夫と子供2人の4人家族で、上の子の小学校入学を機に豊洲に引っ越してきた。
世帯年収は1,700万円を超え、購入したタワマンの価格は購入時からすでに3,000万円近く値上がりし、市場価格は1億円を超える。どこからどう見ても順風満帆な人生だが、そのため息は深く、重い。
教育熱心な家庭が多い豊洲では、低学年からの塾通いは常識だ。4年生ともなれば、クラスの8割以上はSAPIXや早稲田アカデミーといった中学受験用の塾に通っているという。
彼女も周囲の学習環境に合わせ、低学年のうちから子供を中学受験塾に通わせていた。しかし、高学年になるにつれ成績が伸び悩むようになった。
「うちの子供はおっとりしているタイプで……」と肩を落とす彼女を悩ませるのが、同級生に増えた中国系の子どもたちの存在だ。
台頭する「中国系の子どもたち」の存在
近年、中国政府の強権化や経済の失速を受け、日本に移住する中国人が増えていることは広く知られている。豊洲はその最前線だ。
都心へのアクセスに難があるうえ、地盤も液状化リスクを抱えているとはいえ、港区内陸に比べるとリーズナブルで、人工的で画一的で無機質な光景も中国に似ていて人気だという。
「ローンを使わず、現金で一括購入する中国人も多い」(湾岸エリアの物件を扱う不動産仲介業者)。そんななか、豊洲の公立小学校でも中国姓の名字の子供が増えているという。
中国系とはいえ、幼少期に来日したり、日本で生まれたりした子たちが大半で、皆日本語が流暢だ。それだけにとどまらず、彼らもSAPIXや早稲田アカデミーなどの中学受験塾で日本人の子供と机を並べ、大人でも解けないような難易度の問題を日本語で解いているのだというから驚きだ。
前述の女性は子供がやる気をなくした理由として、「中国系の子たちに偏差値や順位、クラスの上下などで差をつけられるようになったことがある」と明かす。
日本の中学受験の過熱が社会問題化して久しいが、強烈な競争社会に揉まれた中国人にとっては、そこまで厳しさを感じるものでもないという。
祖国を離れ、日本で成功するという親の期待を一身に受けた子どもたちは第一言語ではないというハンデをものともせず、最上位クラスに位置する例も多い。
豊洲のタワマンに住む人が自らを「勝ち組」だと思えないワケ
一般的な日本人の感覚からすると、中国系の友人たちの勉強量は異常だという。小学生の共通言語であるニンテンドースイッチを持つことも禁止され、ひたすら机に向かうことを強いられている子もいる。
中国系の親たちは中国人コミュニティだけが参加できるSNSグループを通じて子供の成績やテストの情報を共有しており、受験を巡る情報戦でも多くの日本人家庭は負けているとのことだ。
前述の女性の家では、夫が子供のテスト結果に口を挟むようになったことも頭痛の種だという。
成績が落ちるにつれ、「日本語が母国じゃない奴らに負けるなんて、勉強が足りないんじゃないか!」と激怒。X(旧Twitter)やブログで有名な教育系インフルエンサーの投稿を参考に、早朝からつきっきりで勉強を見るようになり、そのことで家庭の雰囲気が悪化しているという。
湾岸のなかでも東雲や有明と異なり、豊洲のような高価格帯のタワマンに住む住民は高学歴な人が多く、「東大や医学部、最低でも早慶を狙える学校に通わせないと***」といった空気が漂うという。
偏差値を上げるために家庭がズタボロになろうとも、親もそれ以外の道を知らないため、受験戦線からの離脱には勇気がいる。
女性は「豊洲のタワマンに住んでいる大半の人は誰も自分達のことを勝ち組だなんて思っていない」と嘆く。いくら年収が高くても子孫に引き継げる資産があるわけではなく、タワマンの含み益は取り出すことができないまま、教育投資で多額の費用が消える。
塾についていけない子のために塾とは別に個別指導塾に通わせたり家庭教師をつけたりする家庭も多く、塾代だけで年間200万の出費は覚悟しているという。
自ら望んで机に向かう子供は一握りだ。幼少期から自由な時間を奪われ、中国系の子供との受験戦争で消耗する日々。
冒頭の女性も目が光を喪っていく我が子を心配しながらも、それでもブレーキをかけることができないまま、「受験が終わるまでのあと1年だけ……」と自分に言い聞かせているという。
「同じマンションに住んでいた知人は、子供の小学校入学を機に城南地区に引っ越しました。こっそりお受験用の幼児教室に通わせていて、春から私立小学校に通うそうです。私も最初から豊洲なんかに住まなかったらよかったのかもしれない」
取材終了間際、女性の言葉には諦めにも似た感情が込められていた。
帰り際に訪れた豊洲ぐるり公園ではベビーカーを連れた幸せそうな家族が多く見受けられ、耳を澄ますと中国語も飛び交っていた。
微笑ましく、国際色豊かな理想的な光景だが、まだあどけない子供たちもやがて、この競争社会で消耗していくのだろうか。勝ち組のようにみえる彼らもまた、国をまたいだ歪んだ学歴社会の犠牲者なのかもしれない。