「生きがいになる」“定年後の労働者”が切り札に…インバウンド回復も「人手不足」(2023年4月7日)
インバウンド需要を取り込みたいホテルや旅館などの業種では、いま、清掃やフロント業務などを担うスタッフが足りないといった深刻な『人手不足』に直面しています。
去年10月から訪日外国人の数は増加傾向にあります。さらに、今週、中国を対象とした水際措置の緩和もあって、インバウンド需要のさらなる回復が期待されています。しかし、彼らを受け入れるホテルや旅館では、まったく人が足りないっていう状況です。
東京都中央区にあるホテルでは、社長やフロントも含め、全従業員で部屋の清掃に当たっています。以前は、15人以上従業員を雇っていましたが、コロナで稼働率が低下し、人数を削減。その人材が今も戻ってこず、8人ほどです。
住庄ほてる社長・角田隆さん:「できれば正社員でと思っているが、なかなか難しい。アルバイトさん募集しても、なかなか、いま、難しいですね。正直、手の打ちようがない」
帝国データバンクの調査によりますと、『正社員の人手が足りない』と回答した旅館・ホテルは7割を超えています。インバウンド需要が活況だった2019年以前と比べても、人手が足りないと感じているところが多いようです。
こうしたなか、人手不足の打開に動き出した自治体もあります。
新潟県湯沢町。スキー場近くの旅館『高野屋』では、午後のチェックインに向けて忙しい時間ですが、うまく回せているといいます。人手不足解消のキーマンが高橋さん(67)。高橋さんは、従業員ではありません。インターネットを経由して、短時間で単発の仕事を請け負う“ギグワーカー”と呼ばれる存在です。
高橋正和さん:「平日とか週末とか、こだわらないで、仕事が自由にできると書いてあったので、これなら自分の趣味とかも生かせるなと思って」
湯沢町では、企業とともに宿泊業者とギグワーカーのマッチングを支援するアプリ『ゆざわマッチボックス』を開発しました。簡単に応募することができるとあって、町の労働人口の2割以上が登録しています。
高橋正和さん:「ここに来る前は長岡にいた。長岡でタクシーのドライバー。ぜんぜん畑違い」
高橋さんは、定年してからは、ボランティアをしながら空き時間などに高野屋で清掃業務を行っています。
高橋正和さん:「働くことはいいことだけど、フルで働くのは無理がある。すき間時間で、仕事やることが生きがい。働きがいにつながる。使ってくださるのでありがたいですよ」
湯沢町にある『ホテル双葉』。“マッチボックス”を使って子育てをしつつ、短時間の勤務をする女性がいます。
内田喜美代さん:「小さい子どもがいますが、子育て中のママとか、自分の時間ができたときに、すぐ行けるので、子育て中のママ、主婦の強い味方だと思っています」
自分のすき間時間に働く人の存在。短時間に集中して人手が必要となるホテル側の需要とうまくかみ合って、人手不足解消の切り札となっています。
ホテル双葉の女将・小林享子さん:「これからインバウンドのお客さまが戻ってくることが予想されてます。そういうところで、人手の問題ですとかあると思いますが、一つの選択肢として、マッチボックスさんの短い時間でも働いてくれる方がいることは、とてもありがたと思っています」