震災後のオール電化住宅は5万戸減少で大きく後退、富士経済調べ
Impress Watch 10月26日(水)9時0分配信
富士経済は、東日本大震災後のオール電化住宅と、創エネ・蓄エネ機器機器の市場動向を調査した。調査によると、オール電化住宅市場は2011年度58.4万戸を見込んでいたが、実際には50.1万戸まで落ち込む見通しで、2010年に比べると5万戸以上の減少が見込まれるという。
一方、太陽光発電や家庭用燃料電池、蓄電池などの創エネ・蓄エネ機器はのきなみ急増傾向にあり、震災後の電力不足の影響が如実に表れる結果となった。
■ オール電化、関東エリアでの減少が顕著
富士経済では、東日本大震災による、オール電化住宅を取り囲む環境の変化を指摘。震災前に電力会社が行なっていたオール電化住宅の大々的な広告宣伝活動が、震災後には全面的に自粛、節電協力の呼びかけに切り替わっているとしている。
富士経済では、また、2011年度のオール電化住宅市場は、約5万個の減少が見込まれ、2006年度の水準まで後退するとみている。さらに、震災前は2020年度の市場予測を1049.5万戸としていたが、震災後は981.5万戸に変更している。
理由としては震災直後からのオール電化機器の調達不足、原発事故・節電意識の高まりなどを背景としたオール電化住宅への心象悪化などを挙げる。特に、関東エリアでは件数減少が顕著であることから、2012年度以降も影響は残ると予想している。
一方、東日本大震災により住宅の累計数が411万戸から388万戸に減少した東北エリアでは、2011年度は新築着工数よりも、仮設住宅の設置や修繕・リフォームが中心となっているが、2012年度以降は復興需要により、毎年5~6万戸の新規着工住宅数が見込まれている。新規着工時のオール電化採用率は45%程度を予想しており、震災前よりも減少するものの、戸数ベースでは2.5~3万戸と、震災前以上の規模で推移すると予想している。背景としては、災後の電気の復旧の早さが評価され、電力供給不安がオール電化住宅の評価を下げる結果に直結しなかったことを挙げている。
■ 太陽光発電や家庭用燃料電池はいずれも急増
太陽光発電の普及動向については、2009年の余剰電力買い取り制度の開始から、2010年度は前年比52.4%増の21.8万件と大きく拡大。震災以降も、自立運転が可能な創エネルギー機器として需要が増加しており、2011年度も拡大を見込んでいる。
エリア別では、住宅数が多い関東・中部・関西や日射量が多い中国・九州で導入が進んでおり、全体の70%が既築住宅への導入となっている。
太陽光発電とオール電化を組み合わせた住宅の動向は、2010年度時点で55.8万戸で、太陽光発電を設置している住宅のうち、61.5%がオール電化を採用している。しかし、余剰電力買取制度開始後は、太陽光発電を単体設置する事例が増加しており、震災後以降は一層その傾向が強まっているという。
ガス事業者が推進しているエネファーム(家庭用燃料電池)については、震災後に受注が急増。2011年度の設置台数は前年度比でほぼ倍になる見込みだという。従来は新築戸建て住宅にほぼ限定されていたエネファームの導入が、既築住宅分野にも広がりつつあり、今後量産化や新機種投入によりコストダウンが進むことで、さらなる市場拡大が見込めるとしている。
また、エネファームやエコウィル(家庭用ガスコジェネ)に加えて、太陽光発電を設置したW発電住宅の分野は、2015年度の累計が10,450戸となった。
住宅用の蓄電池も震災後に需要が急増、今後さらなる市場の成長を見込んでいる。蓄電池は停電時も電気が使用できる機器として注目を集め、これを受けてハウスメーカーと蓄電池メーカーが連携し、住宅向け商品として蓄電池を展開し始めた。
蓄電池の種類では、震災前は停電対策用に安価な鉛蓄電池を導入していたが、今後はリチウムイオン電池が住宅用蓄電池市場をけん引すると予測している。