88様(81様)へ。
一戸建てと高層マンションを比較したとき、【少なくとも】これまでは高層マンションの方が安全である確率が高かったと言えます。実は、これは本質的な問題ではなく、高層マンションは法律に縛られているのに対し、一戸建て(特に2階建てまで)はそうでなかったことに起因します。構造計算偽造事件を期に、建築確認申請の構造計算の内容を、従来の審査機関の審査に加えて第三者の機関でダブルチェックするという動きがありますが、実は木造の2階建て住宅は特例で対象外でした。もっと正確に言えば、木造2階建て住宅は構造計算までは不要で、壁量計算など簡易な判断方法によっているのです。構造計算を基本的にしていないわけですから(法律で罰せられませんから)、実際に複雑な波形の地震が来たときにどうなるか、はわからないということになります。これに対して、高層マンションは構造計算が義務づけれていますし、最近のマンションは事前に設計住宅性能評価書を、完成後に建設住宅性能評書を第三機関に依頼して取得するのが普通になってきていますので、その際に耐震等級で安全性が評価されている点、一戸建てとは違うことになります。加えて、前にも書きましたが、60mを超える建物の場合は、さらに動的解析まで義務づけられるので、安全面での検討は念入りに行われていると言えます。木造一戸建ての場合は、耐震構造では構造計算そのものが容易ではなくなるという問題があります。天然木材ですから、鉄筋コンクリートなどと比べて、構造計算する際に必要となる力学的強度に関する物性値が1本ごと違ってくるわけで(木材の乾燥度合いとかなども全部違いますよね)、そうなると計算が厄介になるのですね。このため、最近では一戸建てでも、制震構造や免震構造を取り込んだ住宅の普及が始まっています。高層マンションで使われる積層ゴムは巨大な重量がかかって威力を発揮するものですので、一戸建ての場合は、もっと軽量に適合した免震装置を使って免震効果を狙います。価格も大分下がってきているみたいです。
少し本質とはずれましたが、木造一戸建てで大事な事は、その地盤です。しっかりした地盤に建てませんと(マンションも同じですが)、大地震の際には持ちこたえる事ができなくなります。良心的な工務店であれば、地震に対して安全で良質な住宅を販売するということに誇りを持って当たっているわけですから、地盤の良い立地を選び、経験論から建物の構造を強化する工夫をしているはずですし、また場合によっては免震や制震の提案なども行われるべきだと思います。
昨年の夏でしたか、建築基準法が改訂され、今年から来年にかけて、上記木造2階建てに対する特例が廃止される予定になっています。そうなると構造計算の費用が発生し、審査期間も入れた施工計画を義務づけられることになり、結果的に一戸建て住居の安全性も法律で守られることになります。
長くなると怒られますが(ごめんなさい、つまらないと思われる方は飛ばし下さい)、法律を傘にして経済性を取るというからくりがマンション業界にあると思います。一戸建ての特例を無視してお金をかけて計算をする売り手がどれだけいるかとか。耐震等級に隠された建築基準法による売り主の保護とか。耐震等級1というマンションがほとんどですが、それは良いのですが、【極めて稀に発生する地震による力(震度6強のような地震)に対して倒壊、崩壊等しない程度】という文面の建築基準法による解釈を正確に理解している方はそんなに多くないと思います。これは、マンションが事実上利用できない位損傷を受けても、倒壊・崩壊さえしなければ、法律的に何の問題もないということを意味しています。福岡の地震の際や新潟の地震の際に、かなりのマンションでそうした事態が発生しています。気象庁の震度の発表で明暗がわかれると言った妙なことがおきます。震度6強で損傷を受けても原則保証されないけれど、震度5強程度の稀に発生する地震で損傷を帯びた場合は保護される、と言ったような。地震保険は万全ではないですが入った方が良いですね。こうしたことを考えると、私はパークハウス仙台五橋タワーのように、しっかりした免震構造を持ったマンションは安心につきると思います(震度6強の地震でも、致命的な損傷を受ける確率が圧倒的に下がるわけですから)。
ご参考になれば幸いです。