不動産経済研究所が先月、「首都圏のマンション市場動向」を発表した。それによると、2018年12月における初月契約率は49・4%。50%を割るのは1991年8月以来だそうだ。あの平成大バブルの崩壊以来になる。
初月契約率は、その月に初めて売り出した住戸がどれくらい売れたかという割合のことだ。
新築マンションの販売概要を見ると「第○期○次」というような表示が出ているはずだ。新築マンションの売主は、売り出し時期と販売戸数を自由に決めることができる。
例えば、ある物件においてまったく初めての売り出しの時に、10戸程度しか購入申し込みが入らないと予測した場合、「第1期1次」の販売を「10戸」にしたとしよう。予測通り、その10戸に申し込みが入ると「第1期1次登録申込 即日完売」と人気物件らしく装うことができる。
その物件の総戸数が300戸だった場合、最初の売り出しで10戸しか契約できなければ、販売は完全に不調とみなせる。だが、表向きは「即日完売」。さらに第1期2次を「8戸」に設定して、そこにも全戸の申し込みが入れば「第1期1次・2次連続即日完売」と打ち出せる。
新築マンションの場合、建物が竣工した後も販売が続いていると「完成在庫」と称し、販売は不振とみなされる。
それでも「第6期24次 販売戸数3戸」などという表示が出ている物件もある。業界外の人間には分かりにくいが、デベロッパー側としての「この物件は売れ残りではない。販売スケジュール通りに売っているのだ」という痩せ我慢みたいなものだ。
だから、不動産経済研究所が毎月発表する初月契約率は、常に7割以上になってあたり前。それが5割を切るというのはかなりの異常事態となる。
首都圏で新築マンションの価格が高騰し始めたのは2013年から。最初は建築費の高騰が大きな要因だった。やがて土地の価格も上がり始めた。そこへ史上最低金利を導いた異次元金融緩和が加わる。
15年は外国人の爆買いや富裕層の相続税対策によるタワーマンション購入が重なって、一気に局地バブルが膨らんだ。
16年にはそういった動きは止まったが、市場は崩れることなく18年いっぱいまでは高止まりの状態だった。
しかし、経済成長や個人所得の伸びを伴わない物件価格の高騰は市場をゆがめた。都心の人気エリアではマンションの価格が賃料の50年相当分になっていたりする。明らかに経済合理性を欠いた価格形成だ。
当然ながら、売れない物件は売れない。完成在庫は日々膨らんでいる。それが1つの指標である初月契約率の低下になって表れたというわけである。
マンションデベロッパーは高くなった土地でも買わざるを得ないから買ってきた。しかし、そろそろ限界を超えていることを自覚し始めたのではなかろうか。いよいよマンション不況の到来だ。