現状が適法であるとする側の主張が、あまりに乱暴で根拠と言えないものが多かったので、「現状が適法と言えない(むしろ違法性が非常に高い)」と思う立場として、すでに議論されている内容に沿って、私の見解を論じさせていただきます。
また、過日、地域の付き合いの飲み会で、今回の一件について、有志の団体が、行政訴訟の方向で話を進めていかれると伝聞しましたので、私からも意見が参考になればと思います。
第一に、大原則として【御池通沿道特別商業地区建築条例】においては特定用途(=店舗等)としてのスペース要件として、共同住宅(付属する施設(ロビーなど住民向け用の施設を含む)としての使用の除外を明記していること。(第4条(2))
第二に、この特定用途としてのスペースを「貸会場」としているものの、その実態が貸会場としての業を成すにあたっての体を成しているか、要件を満たしているのか大いに疑問があるところ。
会場の仕様(エアコン、椅子や椅子の数、電源、プロジェクター、インターネット設備、照明・音響設備、そしてもちろんトイレも)が、有償にて貸し出される事業用として、一般社会通念と照らして、その料金設定や時間設定が合理的かつ一般的に許容される範囲にあるかどうか。
トイレの話しでは随分と意見があったようですが、お客さんに出すトイレがない店というのは、もちろん街ではたくさんありますが、店員用には通常トイレがあるものです。事務作業等を行う場所に対してはトイレ設置についても法令があります。(厚労省令 労働安全衛生規則628条及び事務所衛生法基準規則17条)
この法令は、「貸会場」を対象にしたものではないですが、一般社会通念からすると、マンション内外の不特定多数の人が集まって、一定の時間を過ごす場所という前提にあるにも関わらず、トイレの設置がないことと、事業としての貸会場という現状とのかい離が大きく、その不適切さを浮き立たせています。
ここが、例えば上記に挙げているようなものが一切整備されていないものであるとすると、もはや名目だけの貸会場と言われても仕方がありせん。
(この点は、裁判においても裁判官の印象を大きく左右する要素だと思います)
第三は、肖像権について。こちらもいろいろと意見があったようですが、大きな誤解があるようなので、説明しておきます。
肖像権とは、大まかにいうと、「自分の肖像をみだりに利用されない権利」のことを言います。肖像権の侵害となるようなケースでは、その被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の必要性等々において違法性が高い場合に「侵害」となりますが、今回の場合はどうでしょうか?
公の場(「店舗」とされている場所の中で不特定多数の人がいるところ)、妥当な目的(行政庁に証拠として提出/行政訴訟で証拠として提出するための資料)で使用するために、平穏な態様で撮影した際に、貸会場の実態が住民ロビーとして使われている現場写真のその背景として人物が入り込んでいたとしても、違法性は極めてゼロに近いと言えます。
(もちろん、人物が特定できるような写真が入っている画像をネット上で、本人に断りなく公開することは違法性がありますのでやらないように)
最後にそもそも論として、今回の建築確認の際には、事業者は、このマンションの1階、2階部分の特定用途のスペースを店舗として申請していたけれども、販売時点では「オーナーズサロン」「ライブラリー」として住民専用を謳っていたという前段がありますよね。
行政による建築確認において、相手側(この場合は事業者であるダイマルヤ)のその意志表示に瑕疵がある場合は、本来、建築確認は司法審査対象となりますので、住民から指摘が当初から出ていればこれは取消しうべき行政行為(=建築確認の取り消し)となっていました。
ただ、すでに出訴期間が終わってしまっているので、今からは取消すことはできません。
しかし、現状の違法性については十分(十二分)に争える余地があると思います。
新聞社などのマスコミをうまく利用されるのも一手です。最近では、同じく京都市内の用途違反で指摘を受けていたオープンしばばかりだった美術館のケースもマスコミ報道がきっかけで自主是正されました。
あと、訴訟にあたっては物的証拠は何よりも重要なので、今となっては難しいかもしれませんが、理解ある入居者の方を探して、是非そのパンフレットの現物を手に入れていただきたいと思います。
それと、弁護士に依頼をこれからされるようでしたら、何事でもそうですが、みな専門としている分野があります。烏丸通りの事務所でもこうしたマンション問題を専門にされている弁護士がいますので、是非調べてください。「この分野では右に出る者はいない」、という先生もきっといるはずです。
まだ指摘したいことはありましたが、長くなりすぎるのでここまででとどめておきます。
最後に、得るものより失う信用の方が多いこの選択肢を取った事業者側の考えがどうしても理解できなかったことを率直な感想としてお伝えしておきます。