「拙者、住人でもなき通りすがりのジバニャンにござる。さて、そなた、いかなる沙汰や経緯にて理事長殿の御印判をお預かり申しておるのか、その事情の一から十まで、しかとお聞かせいただきとう存じ申す。この館(やかた)においては、そもそも理事長殿の御印判を預かるは大層な責務、容易く人手に渡るものとは思えぬゆえ、かような事が起こるに至った次第が、いかにも不審に思えてならぬ。
この館では、近頃、理事会の中において一部の者どもが、己が思うままに振る舞い、勝手気儘に事を運ぶ様子が見受けられると聞き及んでおる。されど、拙者の耳に入る噂が誠であれば、いささか憂うべきことにござる。彼らは御印判を振りかざし、己が都合を優先し、住民の安寧よりも己の利を追い求めるような不届き者でござらぬか?それとも、拙者の考えが偏り申しておるやもしれぬか。
だが、理事長殿が御印判を他の者に委ねるともなれば、何かしら深き事情がそこに隠れているに違いござらぬ。あるいは、理事会の内での権力争い、もしくは理事長殿自身が動きづらい状況に追い込まれているというような、隠れた因果が潜んでおるやもしれぬ。いかにも奇怪なる話にて、拙者の胸中には数多の疑念が渦巻いておる次第でござる。
さればこそ、そなた、御印判をどのような事情にて預かり申したか、その真相を隠さずに拙者へ語っていただきたい。いや、拙者も余計な詮索をいたしたくはないが、ここにて曖昧なるままに終わらせれば、理事会と住民の信頼もまた崩れかねぬゆえ、何卒、その辺りをお含み置きの上、お答え願いたい所存にござる。」